不完全な人ブログ

フライフィッシングについてだったり日々のつれづれについてだったり

習作・小さなハリネズミ

どうしていつもこうなんだろう。
傷つけるつもりはなかったのに。
ただ、優しくしたかっただけなのに。
――君は優しすぎるんだよ。だから――
あの人の声が胸に響く。
知ってるよ、そんなこと。
一人呟いても、届くはずもなく。
ヤマアラシのジレンマ、だっただろうか。
寒さの中、二匹のヤマアラシが近づいて暖をとろうとしても、お互いの針が邪魔になって近づけないお話。
あの二匹、最後にはちゃんと最適な距離を見つけたのかしら。
きっと無理ね。あんなに立派な針だから。
私はね、人を傷つけるための針は持っていないの。
にっこり笑ってぎりぎりまで近寄らせてあげる。
吐息がかかるくらいにね。
でも――知ってた?
触れると小さな棘が刺さるのよ。